「amazon 世界最先端の戦略がわかる」 成毛 眞 を読んだ感想・レビュー
元マイクロソフト(日本法人)の社長、成毛眞さんが書いた「amazon 世界最先端の戦略がわかる」という本を読み終えたので感想・レビューを書いてみます。私はKindle版で読みました。
私はAmazonで買い物をしてプライムビデオを観て、Amazonを凄いと思った挙句、株を1200万円分くらい購入したような人間です。Amazon信者とかAmazon中毒とか言われても否定できません。
そんな人間による感想なのでちょっと鵜呑みにしすぎな面があるかもしれませんが、ご了承ください。
全体を通しての印象としては、これまでのAmazonに関する本とか、Amazonについて書かれたネット記事と重複している内容が多いことは多いです。しかし、そのスキマに知らなかった事柄や著者ならではの考察が書かれていて、このスキマ部分だけでも非常に読んで良かったと思える本でした。
あとこれまでイメージが掴みにくかった業態を、簡素化した図で示していることが多いので、大枠を理解できるものが多かったです。この点でも非常に優れた本だと思いました。
内容をあまりネタバレしてしまうのは良くないと思うので、私が気になった部分をダダっと箇条書きにするくらいに止めて、感想を書いてみたいと思います。(少しのネタバレはお許しください。)
アメリカでは国民的スポーツであるアメフトの放映権を買ったAmazonですが、テレビ局が持つ放映権が2021年になくなると書いてありました。そうなるとAmazonは凄い権利を持つことになりますよね。
まあテレビ局がこのままそんな独占放映権を許すとは思えませんが、今のところそういう凄い可能性を秘めているそうです。
この言い回しがガツンときたので、先日この文章の「ネット」の部分を「AI」に置き換えられる!と書いてしまった私です。
社会の基盤として、既存のものがなくなっても良いくらい強力なものって、時代の変化で出てきます。
インターネットはまさにそれでした。
ジョブズはそれに気づいてAmazonを始めたということですが、黎明期にはAmazonがここまで成長するなんて思わない人も多かったということです。とくに本を取り扱う大きな企業などは、こんなところに負けるわけがないって感じだったのかもしれません。
「ネット通販なんて怖い」とか「本は紙じゃないとダメだ」なんていう人がほとんどだったときに、ジョブズはよく自分の信念を貫いたものです。
AIも今はその怖さとか、問題点がかなり言われていて、AIによる自動運転なんて実現できっこない、なんていう人も多いです。こうやって叩かれ始めたらかなり実現に近づいていると私は思ったりします。
キャッシュフロー経営についての説明は面白かったですね。Amazonの場合、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)が非常に短くて、マイナスだ!と著者は書いています。
このことをわかりやすく書いていることだけでも、この本を読む価値があると思います。
CCCとは、「仕入れた商品が売れて、現金が入ってくるまでの日数」だそうです。
これがマイナスってことは、「商品が売れる前に現金が入ってくる仕組み」です。
ほんまかいな!?と思いますが、このCCCが短ければ短いほど、新しい事業への投資に早く打って出ることができます。
これは本に書いていませんが、
たしかにプライム会員とかの会員費を払わせるのが早いなぁと思ってはいたのです。年会費を全額先に払わせて、もし解約したら使っていない部分を返金するのです。先に現金が入りますよね。プライム会員になった人が後から解約する割合、継続する割合をある程度把握できているので、先に入った現金で投資ができるのだと思います。ただの私の思いつきですが。
あとこの本で詳しく知ることができたのは、アマゾンレンディングのことです。
マーケットプレイスという出品システムがあるのですが、そこに出品している業者にお金を融資するシステムがアマゾンレンディングです。
これがいかに優れているかを知ることができました。
普通、小さい会社がお金を借りる場合、審査があって大変です。
でも、Amazonは出品している業者がどのくらい売れているかをデータとして把握しているので、この審査は出品してもらっている段階で行えているそうです。
「融資を受けませんか?」という通知が自動的に出品者に届くそうです。
そして、その通知が来た段階でもう審査は終わっているというのです。スピード融資ですね。
銀行なんかよりはるかに回収できるかどうかの審査が優れていると思います。
この業務はどんどん伸びていきそうです。
これも驚かされました。
今までの常識だと、「社内のコミュニケーションは大切だ」といった感じでしたよね。
Amazonは「社内のコミュニケーションは必要としない」という社風のようです。
私はこれについては最近感じていた自分の考えと重なることがあって、共感しました。
コミュニケーションをとると、鋭い考えを個人が持っていても、多数決で多くの人に否定されたら実現できないことになってしまいます。
高度成長期のような時代なら、社員がみんな仲良くコミュニケーションをとって、鋭い考えをもとに行動しなくても成長できたと思います。
でも、競争が激しい社会では、鋭い考えを持ってそれを実行できる社員が必要です。Amazonはそれぞれの分野で責任者がいて、異なる分野間でのコミュニケーションは必要ないと考えられているそうです。
著者は、ベゾスですらAmazonの全体像を掴み切れていないのでは?と書いています。偶然のバランスでAmazonは成り立っているのは?みたいに。
私は、ベゾスという人が自分の考えを信じて貫く人なので、それが個人として当たり前だと考えているのだと思います。
言われたことだけをやっている社員なんていらない、というのが最近の企業ですよね。
昔は、愛社精神のある服従人間が沢山いれば会社は成長できたかもしれませんが、もうそんな時代はとっくに終わりましたからね。
AWSや物流などの有名なAmazonの強みについても、この本では詳しく説明していますが、これについてはご存知の方も多いと思うので書きませんが、ちょこちょこ知らなかったことも出てきますね。
配送業のラストワンマイルという考え方とか、アメリカで最も服を売っているのがアマゾンとか、このほかにも興味深い内容がとても多い本です。
Amazonを肯定的に書きすぎじゃない?!とAmazonホルダーの私が感じてしまうくらいAmazonを凄いと書かれているのでその点はちょっと注意ですかね。
ウォルマートとか、Amazonに負けじとECビジネスで頑張っている巨大企業もあります。
AWSで凄い利益を上げているAmazonですが、マイクロソフトのクラウドサービスAzureは、Amazonにとってはかなりの脅威です。Amazonと競合関係の企業はこのAzureにどんどん契約してるみたいです。
Amazonだって、新たな優れたビジネスの仕組みを他の企業が実行して、そのスピード感に遅れたら、成長が止まってしまう可能性も大きいのです。
面白い本だったのでもっともっと書きたい内容はあるのですが、あまり長くなってしまってもアレなのでこのへんで。